1985年、“ジャズ界の帝王”マイルス・デイヴィスは、ワーナー・ブラザースへの電撃移籍を発表。翌86年にはアルバム『TUTU』をリリースし、見事グラミー賞にも輝いた。
でも! 実はマイルスは、その『TUTU』の前にもう1枚、別のアルバムを制作していた。ところが、大人の事情(ま、要は、レコード会社からの圧力)により、完成前に「お蔵入り」となることが決定。本作『ラバーバンド』は、その「幻のアルバム」であり、34年ぶりについに日の目を見ることになった、世界中のマイルス・ファン待望のリリースである。
未完成のまま放置されていた楽曲を今回のために仕上げ直すという重大任務を担ったのは、オリジナルのプロデューサーであったランディ・ホール&ゼイン・ジャイルズと、ドラマーのヴィンス・ウィルバーン・ジュニアの3人。元々のマイルスのビジョンを最大限尊重しつつ、風化していたリズム・セクションを録り直したり、新たにボーカル・パートを付け足すことで完成した本作は、部分的には「2019年の製品」である。と言っても、マイルスがプレイしていたトランペットのパートは、もちろんすべてオリジナルのままだ。
音楽ジャンル的に言うと、『ラバーバンド』は、マイルス史上もっとも「なんでもあり」な1枚である。R&Bバラードもあれば、カリブ音楽もある。“ジス・イズ・イット”はスクリッティ・ポリッティ(当時マイルスのお気に入りバンドだった!)的だし、“ギヴ・イット・アップ”のファンク魂はプリンス(本格コラボ・アルバムがずっと噂されてたけど、結局、実現しなかった)風だ。80年代、多くのジャズ・アーティストがノスタルジーに逃げていた中、マイルスだけは、とことん「現在進行形」だったことがすごーくよくわかる“新作”。 (内瀬戸久司)
各視聴リンクはこちら。
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。