Z世代のポップ・プロデューサー、待望の初ソロ作

フィニアス『ブラッド・ハーモニー』
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ALBUM
フィニアス ブラッド・ハーモニー

ビリー・アイリッシュの兄で、彼女のコラボレーターとして知られるフィニアス。一方で、彼がソロのアーティストとして妹に先駆けて活動していたことは有名だが、この度、待望のデビュー作となるEPをリリース。これまで精力的に継続してきたシングルの配信に加えて、近年はプロデューサーとしてサム・スミスやセレーナ・ゴメス、ファーザー・ジョン・ミスティらのセッションにも参加。そんな今の時代を象徴する若きポップ作家を改めてまとまった形でプレゼンスする、本作は格好の1枚に違いない。

ノイジーなエフェクトや低音域を強調したプロダクションをシグニチャーとするビリーとの違いは、一目瞭然。音数を絞ることによって際立つアンビエンスは両者に共通する側面だが、フィニアスの場合はフォーキーなアレンジが楽曲の中心に置かれていて、よりオーガニックでウォーミーなニュアンスとなっているのが魅力だ。シンセ・ループとハンドクラップがドラマチックに彩る “I Lost a Friend”は、ボン・イヴェールを連想させる場面もあり素晴らしい。瑞々しいメロウネスをたたえた“Partners in Crime”然り、ピアノやアコースティック・ギター、パーカッションといった生楽器とエレクトロニクスを巧みに重ね、かつ抜き差しされたテクスチャーの按配がじつに絶妙。極力生の歌声をフィーチャーしたボーカリゼーションと相まって、ビリーのダーク・ポップとは非なる、フィニアス独自の音楽世界が表現されている。

元はアヴィーチーのために書かれたというダンサブルな“Shelter”。あるいは、“Let's Fall in Love for theNight”がたたえたラテンのテイストは、カミラ・カベロとのコラボレーションも噂されるフィニアスの、ポップ音楽の世界の最前線に身を置くクリエイターらしいトレンドへの目配せもうかがわせて興味深い。そして“I Don't Miss You at All”は、さながら音響ボッサとでもいえそうなモダンでサウダージな風合い。そうした洗練されたサウンドの反面、歌詞で描かれる内容は自身や身近な相手のことだったりとパーソナルで内省的なトーンが色濃く、その対象を見つめる情熱的で深い眼差しは、あの妹にしてこの兄――と思わず唸らされる。

なお、最新のインタビューによれば、本作はこれまでの既発シングルと来たるフル・アルバムとの間に橋を架けるもの、という位置付けらしい。つい先日には、ビリー・アイリッシュの新曲の制作に取り組んでいることが報じられたばかり。今後の動向に要注目である。 (天井潤之介)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。
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フィニアス ブラッド・ハーモニー - 『rockin'on』2019年12月号『rockin'on』2019年12月号
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