これまでの尾崎世界観が創るラブソングは、感情の際の際がキリキリと抽出されているか、ささくれだった情景描写がなされていたが、“愛す”は情景とそこに漂う感情、その両方がシンプルに際立っている。クリープハイプの究極のラブソングと言ってもいいのではないだろうか。不格好さや愛嬌も含めて、愛おしいという気持ちに溢れている。《逆にもうブスとしか言えないくらい愛しい》。ふたりが過ごした時間と想い、すべてが詰まったような必殺のフレーズの奥行きを最大限にもたらすためにすべての歌詞があるような。そしてまた、すべての音と余白がその感情の広がりのためにあるような曲だ。
昨年11月に現メンバーでの10周年を迎え、尾崎の文筆業も盛んな中、明るくて自由な光がクリープハイプに訪れている。(小松香里)