非シングルのシングル1位曲

ロディ・リッチ『プリーズ・エクスキューズ・ミー・フォー・ビーイング・アンチソーシャル』
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ALBUM
ロディ・リッチ プリーズ・エクスキューズ・ミー・フォー・ビーイング・アンチソーシャル

米アルバム・チャートで初登場1位を記録した、ロディ・リッチのデビュー作。ドクター・ドレー、ザ・ゲーム、ケンドリック・ラマーらを輩出したロサンゼルスのコンプトン出身で、ギャング集団クリップスに在籍歴もありという、限りなく古典的なウェスト・コースト・ヒップホップ的な背景を誇っている。しかし、ロディがここまで爆発的なブレイクを成し遂げたのは、あくまでもその傑出した声とMCとしてのボーカルの魅力と、作曲スキルのせいだ。実際、18年のミックステープからのシングル“Die Young”や“Every Season”がプラチナ相当のヒットとなっていたのも、ロディのMCが誇る、メロディアスなフロウとその伸びのある心地よい発声が聴かせる魅力のせいなのだ。

先行シングルとなった“Big Stepper”、“Start wit Me”、“Tip Toe”はいずれもMVも公開されていて、そこで打ち出されているイメージはストリート系強面ラッパーとしてのものだし、歌詞自体もコンプトン出身アーティストらしく、貧困から手段を選ばずに這い上がってきて現在を謳歌する俺様節となっている。しかし、“Big Stepper”を聴いてわかるのは、この曲の最大の魅力がそうしたイメージより、彼が低音のダミ声のラップと高音の伸びのいいフロウを自在に使いこなしていて、これがどこまでも気持ちのいいパフォーマンスを生んでいるところなのだ。

その最たるものがアルバム・リリース後にシングル・リリースされていないのにシングル・チャート1位に輝いた“The Box”だ。つまり、それだけこの曲だけが爆発的に再生されたということで、この決め手になっているのはロディの滑舌とメロディ・センスだ。しかも、病み憑きになる、異様なビープ音のようなSEも実はロディの高音の声なのだ。 (高見展)



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ロディ・リッチ プリーズ・エクスキューズ・ミー・フォー・ビーイング・アンチソーシャル - 『rockin'on』2020年4月号『rockin'on』2020年4月号
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