今年度ベスト・アルバムか

フォー・テット『シックスティーン・オーシャンズ』
発売中
ALBUM
フォー・テット シックスティーン・オーシャンズ

鬼才キーラン・へブデンのユニットの2年半ぶり10作目。これがもう、圧倒的に素晴らしい大傑作。あまりの気持ち良さに、いつまでも浸っていたくなる。

前作『New Energy』は、いかにもフォー・テットらしいカラフルでメランコリックでソフィスティケイトされた美しいエレクトロニカ・アルバムだった。本作は前作の延長線上にあると言っていいだろう。だが描かれる世界はより穏やかで瞑想的だ。

前半は四つ打ちのグルーヴィなテック・ハウス・ナンバーが中心となっていて、キラキラとしたクリアな音色と歯切れのいいリズムが、的確にツボを刺激する。キックの締まりのいい低音が効果的だ。2曲目の“Baby”ではEDMの歌姫エリー・ゴールディングがゲスト参加しているのが意外といえば意外だが、彼女のボーカルをチョップして声ネタとしてループさせた、いかにもフォー・テットらしい仕上がりに納得。どことなく東洋的なニュアンスのあるトライバルでエキゾティックな“Insect Near Piha Beach”も良い出来だ。後半にいくに従ってチル・アウト色が強くなり、メロウな色が濃くなっていく。こだまするボーカルと鳥のさえずりの音が立体的な音響効果をもって聴く者を包み込むアンビエント・チューン“4T Recordings”など、隅々までアイディアと工夫が凝らされた、繊細で透明感のある、美しい、というよりは優しいトラックが並んでいる。テッキーなミニマル・ハウスとしても素晴らしい作品だが、アンビエントでチルなダウンビート・エレクトロニカのアルバムとして、近年出色の出来だ。

分断と格差と差別が広がり、新型ウイルスの蔓延で先行きの見えない不安に苛まれる心をそっと解きほぐしていくような作品。間違いなくフォー・テットの代表作になるはず。 (小野島大)



詳細はFour Tetの公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

フォー・テット シックスティーン・オーシャンズ - 『rockin'on』2020年5月号『rockin'on』2020年5月号
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