越境するエレクトロ・ポップ

リナ・サワヤマ『サワヤマ』
発売中
ALBUM
リナ・サワヤマ サワヤマ

日本生まれ英国育ち、ロンドンを拠点に活動を続け、2017年のデビュー・ミニ・アルバム『Rina』をきっかけに次世代のアイコンとしてカルチャー、ファッション・メディアでも大きなバズを呼んだリナ・サワヤマの待望のデビュー・アルバム。本作に至って彼女のエレクトロ・ポップはその可能性の及ぶ範囲を一気に広げている。特に鮮烈なのがシンフォニックなエレクトロを華麗なギター・ソロがさらに盛り上げる“Dynasty”や、ヘヴィ・ロックとのブルータルなリフと軽やかなR&Bの融合が痛快な“STFU!”など、ロック・サウンドを大胆に取り入れていくマナーだ。彼女は2000年代初頭のクラブ・ミュージックへのオマージュを意識したと語っているが、エレクトロ・ポップからヒップホップ、ソウル、ファンク、ロックまで横断した本作は、例えるならネプチューンズN.E.R.Dを彷彿させるあの時代のミクスチャーに通じるものがあるし、一方で彼女が椎名林檎宇多田ヒカルを原体験に持つというのも納得、日本人にはどこか郷愁が感じられるメロディ・センスも独特だ。

物欲に支配された資本主義を批判する“XS”や、欧米に暮らすアジア人としての経験に基づいたマイクロアグレッションをテーマにした“STFU!”など、ケンブリッジ大学で政治学を修めた彼女の知性がストリートのリアルな言葉と結びついた歌詞も素晴らしい。人種的にもセクシュアリティの面でもマイノリティとして生きてきた彼女が、祈りのようなコーラスと共に《私たちは共感のための共感なんていらないし、苗字や遺伝子を共有しなくたっていい》と歌う“Chosen Family”は、新たなクイア・アンセムとして本作のクライマックスと呼ぶに相応しいナンバーに仕上がっている。 (粉川しの)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。
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リナ・サワヤマ サワヤマ - 『rockin'on』2020年6月号『rockin'on』2020年6月号
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