CDとしては約1年ぶりのリリースとなる4thミニアルバム。元来様々な感情が入り乱れる心の中を、歌詞だけでなく音色やコード、歌の温度感に落とし込むことに長けたバンドだが、今作はさらに楽曲の主人公がその瞬間見ている景色、身を置いている場所の空気感を音像で作り出している。“シーグラス”は煌びやかな波しぶきや透明感、水面に反射する青空、潮の香りを思わせるロマンチックでピュアなギターの刻みや音色、感傷性を帯びたボーカルのトーンと繊細で知的な起伏を描くベースライン、どこまでも広がるような晴れやかな空気を纏ったドラムと、異なるキャラクターを持つ3人の手によってひと夏の景色が描かれる。

それ以外にも、切ない感情を丁寧かつダイナミックに描くバンドの真骨頂的ミディアムナンバー、軽やかに逞しさを表現するポップソング、幸せであたたかい記憶と喪失感を同時に鳴らすアコースティック要素の強い楽曲など、全曲が自分たちの特性を磨くことで成し得た進化の賜物だ。解像度の高い濃密でエネルギッシュな音楽は、我々を颯爽と新しい季節へ連れ出してくれる。（沖さやこ）

『ROCKIN'ON JAPAN』2020年10月号より