あまりにも惜しい才能の証拠

ジュース・ワールド『レジェンズ・ネヴァー・ダイ』
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ALBUM
ジュース・ワールド レジェンズ・ネヴァー・ダイ

昨年12月に急逝してしまった、ジュース・ワールド。エミネムの新作『ミュージック・トゥ・ビー・マーダード・バイ』にも声がかかっていたことから、その前途が嘱望されていたことがよくわかるが、残された膨大な音源のなかからまとめられたのが本作。

実はジュースは“バンディット”というシングルを昨年10月にリリースしていて、これが来る新作『The Outsiders』のリード・シングルとなるはずだった。したがってこれが死後まずはリリースされる作品と目されてきたが、今回、タイトルも改められていることから、『The Outsiders』は先送りになり、新たに編集されたのが本アルバムになったと考えられている。というのも、このアルバムは作品としてのテーマ性というより、ジュースの資質を存分に披露する内容となっているからだ。

もともとジュースの画期性はなんだったのかといえば、いわゆるぽっと出でも爆発的なセールスと人気を手中にできる、SoundCloudヒップホップのひとりでありながら、強烈なラップ・スタイルを誇っていたということだ。強烈というのはどういう意味で強烈なのかというと、ジュースの場合、どこまでも聴きやすく、わかりやすく、なおかつ突き刺さるラップを繰り出せるということだ。特にジュースは21歳の男子として抱える、さまざまな不安や焦燥感などをあまりにもリアルに、その心情と心象を同時に突きつけることができるという、異常な表現力を誇っていたのだ。たとえば、自身の現状への不安をタイタニック号にたとえて、張り裂けそうな胸の内を綴る“タイタニック”などはそんなジュースの魅力を存分にみせつけるものだ。自身の深刻な薬物依存症について赤裸々に綴る“ウィッシング・ウェル”など、ジュースの資質と個性がわかりやすくひもとかれる形見となっている。 (高見展)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。
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ジュース・ワールド レジェンズ・ネヴァー・ダイ - 『rockin'on』2020年9月号『rockin'on』2020年9月号
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