熱々のポップ・パンク、始めました

マシン・ガン・ケリー『ティケッツ・トゥ・マイ・ダウンフォール』
発売中
ALBUM
マシン・ガン・ケリー ティケッツ・トゥ・マイ・ダウンフォール

マシン・ガン・ケリー、通称MGK――かつての彼は「ラッパー」だった。マシン・ガンのような高速ラップを武器とし、11年にP・ディディのバッド・ボーイ・レコーズと契約。4枚のアルバムをリリースした一方、18年には白人ラッパーの先輩、エミネムにビーフを吹っかけたことでも話題となった(エミネムの代表曲“ラップ・ゴッド”へのディス・トラック、その名も“ラップ・デビル”、最高だったよね!)――でも、今のMGKはラッパーではない。9月に発売された本作は、全曲でラップを封印した、まさかのポップ・パンク・アルバムである。

いきなりの転職を陰で支えたプロデューサーは、ブリンク182のドラマーとしておなじみのトラヴィス・バーカー。19年のシングル曲“I Think I’m Okay”で初タッグを組んだふたりは、その仕上がりに手応えを感じ、本作のために2ヶ月を費やしてアルバム一枚分の曲を共作した。本作中の一部の曲がどことなくブリンク182みたいに聴こえるのは、まさにそのためである。

でも、誤解しないように。これは懐古主義の音楽とは違う。本作の魅力は、MGKが00年代ポップ・パンクの“魂”の部分――「誰からもわかってもらえなくて、またひとりぼっちになってるボクの物語」――を誠実すぎるほど誠実に理解して、実践していることだと思う。いわば、正しく「エモい」ポップ・パンク・アルバムなのだ。

ビルボードの全米チャートでは見事1位に輝いた本作。2020年の下半期、全米で最も売れたロック・アルバムを作ったのがラッパー(というか、元ラッパー!?)だったという事実は「皮肉」と言うより、「痛快」と評する方が正解だろう。2020年の洋楽シーンって、過去最高に予測不可能で、時にクレイジーで、最高にエモだ。(内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。
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マシン・ガン・ケリー ティケッツ・トゥ・マイ・ダウンフォール - 『rockin'on』2020年12月号『rockin'on』2020年12月号
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