止まらない創造力

スマッシング・パンプキンズ『シール』
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ALBUM
スマッシング・パンプキンズ シール

ビリー・コーガンの創作力が止まらない。ジミー・チェンバレンに続きジェームス・イハスマッシング・パンプキンズに戻り話題となった『シャイニー・アンド・オー・ソー・ブライトVOL.1/LP:ノー・パスト、ノー・フューチャー、ノー・サン』(18年)、昨年11月には本名のWilliam Patrick Corgan名義でソロ・アルバム『Cotillions』を出したというのに、もうこの全20曲のボリューム・アルバムが登場。さらに名盤『メロンコリーそして終りのない悲しみ)』(95年)と『マシーナ/ザ・マシーンズ・オブ・ゴッド』(00年)の続編に当たるコンセプト・アルバムの33曲を21年のリリースに向けレコーディング中との噂も聞こえてくるが、それらのすべてが有機的につながり、楽曲が活き活きと響いてくる。

前作をプロデュースしたリック・ルービンと別れビリー単独のプロデュースとなったせいもあるが、どの曲にも非常にタイトなサウンドをバックにビリーならではのキャッチーなメロディやリフが溢れているし、シンセで作られたサウンドを基本に、アレンジはシンプル、装飾もシエラ・スワンとケイティ・コールのバック・コーラス程度なので素直に楽曲の良さが前面に押し出されてくる。

アルバム・タイトル・トラック“シール”と共に先行リリースされたオープニング・ナンバー“ザ・カラー・オブ・ラヴ”のドラマチックな幕開けから鋭いビートに明快なメロディが乗っかっていくスマパンならではの導入はインパクトがあり、続くミディアム・テンポの中で、ダイアモンドで心を傷つけてごらんと歌う“コンフェッションズ・オブ・ア・ドーパミン・アディクト”の叙情味と危険な匂いが迫る世界が連続する幕開けは完璧だし、印象的なメロディと併走するギターがお尋ね者の孤独な心を描き出す“アノ・サターナ”から、人知を超えたスケール大きな物語をテーマにしつつひたすら美しい“バーチ・グローヴ”、さらにアップ・テンポの中で奥行きの深いドラム・サウンドとコーラスを引き連れ黙示的な世界を歌う“ウィッチ”と続く中盤の流れも充実の極み。とにかく心の奥底から曲があふれ出すのが見えるかのようだ。

ビリーが制作した5つのエピソードで構成されたSFタッチのアニメーション・シリーズ『In Ashes』も発表されていて、確かにそれらは単なるMVとは違ってストーリー性とサウンドがストレートにミックスされ、アルバムの世界を大きく拡げてくれている。絶好調時の、さらにどこまでいくのやらといった勢いが今のスマパンには漲っていて、ますます目が離せなくなる。(大鷹俊一)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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スマッシング・パンプキンズ シール - 『rockin'on』2021年1月号『rockin'on』2021年1月号
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