先人に胸いっぱいの愛を

トム・モレロ『コマンダンテ』
発売中
EP
トム・モレロ コマンダンテ

2020年は新型コロナにより、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの再結成ツアーが消えたのは至極残念。その凄腕ギタリストであるトム・モレロから初のソロ名義アルバム『ジ・アトラス・アンダーグラウンド』に続く、新EPが到着した。前作はスティーヴ・アオキらをゲストに迎え、EDMを取り込んだトム流ミクスチャー/ダンス・ミュージックにブッ飛ばされた。今作は5曲入りというコンパクトな内容だが、聴き応えはとんでもなく深い。全体を通して、ロックの巨人たちに対する敬愛と追悼の色合いが浮かんだ作風となっている。全編ほぼインスト曲が並ぶものの、それが逆にトム自身のエモーショナルな心情を炙り出しているよう。なぜなら、ギターがいつも以上に饒舌に歌いまくっているからだ。

いきなりジミ・ヘンドリックスのカバー“Voodoo Child”で始まるが、先人にリスペクトを表しながら、色気たっぷりに弾きまくる音色はさすがの一言。唯一の歌入り曲“Interstate 80(with Slash)”においてはガンズ&ローゼズのスラッシュ(G)と豪華共演を繰り広げ、エディ・ヴァン・ヘイレンに捧げた“Secretariat (For EVH)”は、ヴァン・ヘイレンの“暗闇の爆撃”に対する回答だろうか。1分台のショート・チューンだが、そこにはエディ愛がぎっしりと詰め込まれている。そして、レイジ・ファンをニヤリとさせるトリッキーなギター・フレーズをフィーチャーした“Suburban Guerrilla”みたいな曲調も用意。ラスト曲“Cato Stedman & Neptune Frost”はレッド・ツェッペリンの“貴方を愛しつづけて”を彷彿させるブルース・フィーリングを押し出した曲調でこれも実に味わい。トムの土台には豊潤なルーツ音楽が底流にあることを改めて思い知らされる1枚だ。(荒金良介)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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トム・モレロ コマンダンテ - 『rockin'on』2021年1月号『rockin'on』2021年1月号
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