レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、さらなる闇へ向かうアメリカで完全復活! 中絶の権利を覆した最高裁の判断に痛烈な異議を唱える彼ら、その戦闘モード全開のカリスマに刮目せよ!

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、さらなる闇へ向かうアメリカで完全復活!  中絶の権利を覆した最高裁の判断に痛烈な異議を唱える彼ら、その戦闘モード全開のカリスマに刮目せよ! - rockin'on 2022年9月号 中面rockin'on 2022年9月号 中面

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが7月9日、ウィスコンシン州で11年ぶりの復活ライブを行った。“Public Service Announcement”と題されたこのツアーは、元々は米大統領選があった2020年に開催し政権を批判するものになる予定だった。しかしコロナ禍で延期されて、その間に大統領選も終わり、巨大な怒りの矛先もなくどうなるのかと思っていたが……アメリカは更なる闇へ向かっていた。警察による黒人への暴力に、銃乱射事件、最高裁による中絶の権利を覆す判断など、期せずして2022年、彼らは完璧なタイミングで帰ってきた。

実はまだ自分の目で観れていないが、米主要メディアは「今のアメリカを言い当てる」(ローリング・ストーン)とか、「政治的緊迫のあるアメリカで新たな闘争のために復活」(NYタイムズ)など、すでに絶賛の嵐。中でも、CNNなどまで取り上げ即話題となったのは、最高裁が中絶の権利を覆した判断について発したメッセージだ。

“フリーダム”の時にスクリーンに次々に事実を掲げ、「出産を強制するこの国は、世界の経済大国の中で唯一産休制度が保障されていない」「出産を強制するこの国は、黒人の出産時の死亡率が白人の出産時の2~3倍である」「出産を強制するこの国は、子供と10代の死因の1位が銃による暴力だ」と彼らの曲同様の緊迫感で迫り、「最高裁を中絶せよ!」(*Abort=中絶する、中止するの意)と一撃を食らわし、ザック・デ・ラ・ロッチャが「フリーダム!」と連呼する。またバンドはツアー初日から3日間で集めた47万5000ドルを地元の中絶支援団体に寄付する完璧さ。

ライブの最後を飾る“キリング・イン・ザ・ネーム”は、1991年のロドニー・キング事件を発端に書かれたもので、「選ばれし白人が(警察の)バッジを付けていれば、彼らによる死も正当化されてしまう」と、30年前の曲がそのままジョージ・フロイド事件などの傷も生々しいアメリカに突き刺さる。20年以上も新曲がない彼らが、今の時代をどのバンドより重く痛烈に批判しているのだ。

前回復活した時、ザックは「俺達には任務がある」と言ったが、今回も「力を持っているのは、警察でも、政治家でもない。君達なんだ」という「公共広告」を広めに帰ってきた。ツアー2日目で、ザックが足を怪我した時は11年間のギャップを感じたが、バンドがポストする映像を観る限りでは、椅子に座ったままパフォーマンスするザックのカリスマ性がまるで衰えてないのも驚異的だ。(中村明美)



レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、さらなる闇へ向かうアメリカで完全復活!  中絶の権利を覆した最高裁の判断に痛烈な異議を唱える彼ら、その戦闘モード全開のカリスマに刮目せよ!
rockin'on 編集部日記の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする