パルプのジャーヴィス・コッカーによる新バンド、ジャーヴ・イズが、遂にデビュー作をリリース! バンド名からして気合いが感じられるし、2017年にシガー・ロス主催のフェスのために結成されてから、UKツアーや、プリマヴェーラなどの大型フェスも経験済み。……とはいえ、正直おそるおそる再生したことは否めない。これまで彼は、良くも悪くも浮き沈みがそのまま音楽に反映され、自らの迷宮にリスナーをいざなうようなところがあったからだ(楽しめる迷宮もあったけれど)。
1曲目の“Save the Whale”は、つぶやきを女性コーラスで彩るような、シンプルな構成。「こういう曲」として正しい形だけれど、作品はこのまま進むのだろうか……それともイントロダクション的な意味合いだろうか……そんなモヤモヤは、2曲目の“Must I Evolve?”で消え去った。《イエス》《ノー》のリズミカルなコーラスと共に、どんどんグルーヴがうねっていく。(懐かしすぎる感覚で恐縮だが)かつて自分がブリットポップ一の美声だと惚れ込んだ、ジャーヴィスの歌声も堪能できる。そこからは、重層的でメロディアスなサビが印象的な“Am I Missing Something?”、タイトルを入口に世界観に引き込まれる“Sometimes I am Pharaoh”など、トーンは一貫してローながら、曲調も声色も様々な楽曲が飛び出してくる。迷宮感はなく、「これが自分の道」と見定めて進んでいるような印象だ。
ライブ・レコーディングをベースに、オーバーダブやボーカルを追加していくスタイルで完成させたところも、今作のグルーヴ感と構築美の共存に関わっていると思う。やっぱりジャーヴィスは、表舞台に出続けて、独自のアップデートを続けていって欲しいアーティストだと、思わずにはいられない。(高橋美穂)
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