バスタでバズれ

バスタ・ライムス『エクスティンクション・レヴェル・イヴェント2:ザ・ラス・オブ・ゴッド(リローデッド)』
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ALBUM

90年代にヒップホップを聴いていた人なら、バスタ・ライムスが「ウー・ハー!」と雄叫びを上げながらソロ・ラッパーとして最初に大ブレイクした瞬間の爽快感を、今でも鮮明に覚えているんじゃないだろうか。時は96年。ちょうどヒップホップ界では誰もが誰かと喧嘩していた時代なのに、バスタだけはイーストともウエストともサウスとも仲良くつるんでたし、おまけにジャネット・ジャクソンオジー・オズボーン(!)ともマブダチで、いつでも「ウー・ハー!」と元気いっぱいに飛び跳ねていた。誰からも愛された……というか、誰もが“愛さずにはいられなかった”ラッパーなのである。ウー・ハー!

12年の『Year Of The Dragon』以来しばらくアルバムを出していなかったバスタだが、本作は8年ぶりの新作で、タイトルは「世界の終わり」をテーマとした98年発表作の続編を意味したもの。「黙示録」や「世紀末」といったイメージは初期のバスタの十八番だったけど、コロナの世界的拡大やブラック・ライブズ・マターや大統領選をめぐる狂騒劇が相次いだ2020年は、バスタ復活の年にまさにドンピシャだったということだろう。ぐるっぐるに巡り巡って、時代がバスタに追いついたのだ――ま、ある意味。

音的にはオールドスクールなイーストコースト風のビート主体のアルバムなので、ケンドリック・ラマーなんかも登場するけど、曲調との相性的には、やはりM.O.P.やQティップといった「90s同窓会」な旧友ラッパーとの共演曲が盛り上がる。バスタの芸風も相変わらずで、世界の終わりをテーマにこれほど楽しそうに韻を踏みまくるラッパーは他にいないだろう。レジェンドだけが作るのを許された、痛快すぎるパンデミック・アルバムである。(内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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『rockin'on』2021年1月号