存在感を増した歌声

ジョージ・ハリスン『オール・シングス・マスト・パス(2020ミックス)』
発売中
SINGLE
ジョージ・ハリスン オール・シングス・マスト・パス(2020ミックス)

ジョージ・ハリスン『オール・シングス・マスト・パス』の発売50周年を記念し、タイトル曲の2020年版ミックスがデジタル・シングルでリリースされた。管楽器の音が中央によせられ立体的になったほか、まずボーカルがくっきり目立つものになっている。ミックスを担当したのは、最近、ジョン・レノン『ギミ・サム・トゥルース.』、ザ・ローリング・ストーンズ『山羊の頭のスープ』のリミックスも手がけたポール・ヒックス。ゆったりしたテンポ、穏やかな声で歌われたジョージの王道といえる柔らかな曲調だ。それに対し、元のイメージを壊さず、主役の存在感を高めた仕上がりになっている。

“オール・シングス・マスト・パス”はビートルズ末期に作られ、ギターのみでひとりで録音されたデモは、『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』に収録されている。当時、完成に至らなかったのは、4人組バンドのなかでジョージが、ポール・マッカートニー、ジョン・レノンにつぐ3番目の立場だったせいでもある。だが、ビートルズ解散後、ソロ・アルバムで最初に1位を獲得したメンバーは、ジョージだった。しかもアナログで3枚組、CDでも2枚組の超大作で、タイトル曲が“オール・シングス・マスト・パス”だった。

「すべては過ぎ去っていく」というそのフレーズは、ビートルズの崩壊を歌っているようにも、ジョージが傾倒していた東洋思想に通じるようにも思えた。「諸行無常」とも訳せるタイトルなのである。過ぎ去る時のなかで生きる人みんなを包みこむような優しい曲だ。ジョージの追悼コンサートでポールが歌ったバージョンも印象的だった。

そして、『オール・シングス・マスト・パス』については来年、さらなるプロジェクトが予定されているらしい。(遠藤利明)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。
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ジョージ・ハリスン オール・シングス・マスト・パス(2020ミックス) - 『rockin'on』2021年2月号『rockin'on』2021年2月号
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