モデル体型のスキニーなルックス、ハイ・センスな趣味&人脈、NY育ち、とくればストロークスが脳裏をよぎるが、このザ・ヴァージンズはあの5人よりももっとギラつきながら、もっと無自覚にポップと対峙しているバンドである。もっとも“フェルナンド・パンド”や“ヘイ・ヘイ・ガール”のようにストロークス的なスタイリッシュなモダン・ロックのときめきもばっちり入っているのだが、やはり彼らの音楽で面白いのは“リッチ・ガールズ”や“マーダー”にたっぷり込められた、80年代ポップ直系のファンキーなグルーヴ。アメリカの女子に大人気の、NYのお嬢様セレブを描いた学園ドラマ『ゴシップガール』(デスキャブ人気に火をつけた『The O.C.』と同じプロデューサー)でも使われた“リッチ・ガールズ”のメロウなベースラインの濃厚さに最初はのけぞってしまったものの、そこに投影されているのは09年のNYを生きる彼らのリアリティ。あくまで自己の表現手段として選んだのがこのノリ重視の金粉まぶしたポップ・サウンドだったというわけで、けれん味もゼロである。全編を通して風通しよく、意外にさらっと聴けてしまうのも現代っ子のセンスが反映されているおかげなのだろう。
80年代カルチャーの再来云々という話は数年前からメディア先行型で語られてきたが、ようやくそれがアーティスト、それも追体験してきた世代に届き、再び表現の場に提示され始めた。80年代の音楽だけでなくアートにも心酔しているザ・ヴァージンズは、その時代のまさに最先端にいる。フジ・ロックでの初来日ステージが楽しみだ。(林敦子)