オリジネイターのリニューアル

デペッシュ・モード『サウンズ・オブ・ザ・ユニバース』
2009年04月22日発売
ALBUM
デペッシュ・モード サウンズ・オブ・ザ・ユニバース
ここ数年というもの、80sだニューウェイヴだエレポップだと形容される新人のアルバムを聴くたびに「これデペッシュ・モードじゃん」としつこく言い続けているせいか、編集部の若い衆にいい加減うんざりされ始めている筆者である。しかし、めげずに再度繰り返しておく。80sリバイバルと呼ばれるムーブメントの土台を形成している最重要オリジネイターは、キュアーでもN・オーダーでもU2でも、ましてやT・ヘッズやGO4でもなく、DMなのである。特に本国UKよりUSのそっち系ニューカマーにその傾向が顕著で、彼らのDNAにDMコンプレックスが植え込まれているとしか思えないことも多々ある。エレポップ・バンドから最上最大級のオルタナティヴ・バンドへと華麗なる転身を遂げたDMの歴史、そして彼らの無機質エレガントなビート×退廃と贖罪と背徳をたっぷり蓄えた官能メロのギャップが生む禁忌とアングラ感覚は、「シンセでロックをやる」ことに後ろめたさを感じる00年代のスノビズムにとって免罪符にも等しい威力を持っているのだろう。

『ヴァイオレーター』(90)を頂点とするDMのそんな様式美を、彼ら自身の手で初めてリニューアルすることに成功したのが本作である。最大の変化はD・ガーンが本格的にソングライティングに携わったことで予定調和が減った点だ。あくまで尊重されるのはDMらしさだが、M・ゴアの緻密な設計図を時に逸脱するガーンの声と所作は、彼らの様式美に様式を越えたアクチュアリティを再び与えようとしている。さらに10年、DMのロールモデルたる威厳を保つ作品になるはず。(粉川しの)
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