去年NYタイムズ紙に出ていた記事で、良い話だなと思ったのが、アメリカでは定年退職後に「やっと時間ができたから、自分が本当に好きなことをして生きていきたい」と好きなバンドのコンサートや、フェスに行く人達の数が上昇しているということ。
https://www.nytimes.com/2017/04/07/business/retirement/aging-rock-fans.html?_r=0
その記事によると、51歳から70歳の人達のなんと44%もの人が、10年前より多くのコンサートに行っている、というのだ。
「定年して時間ができたからと言って、いきなりゴルフを始めたりというのも違うような気がする。僕はタバコも吸わないし、酒を飲むわけでもないし、ゴルフもしないし、フロリダに別荘を持っているわけでもない。音楽だけが趣味なんだ」
さらに「夏フェスに行くのは、なかなかキツい。夏の日差しの中歩き回るのは大変だからね。でも、ウォーレン・ジヴォンが言っていたように『俺は死んでから眠る』よ」と答える人もいるし、「何万人もの人達と一緒に歩き回るのは大変だ。でも僕は、ローリング・ストーンズが辞めるまで着いて行くよ」と答える人もいる。
また、「子供が独立したから、デザート・トリップなどのフェスを観るのが楽しみ。いつの日かニール・ヤングが演奏できなくなる日が来る。私は、その最後のコンサートを観たい。そして私が死ぬ時は、そのリストバンドをしていたい」というのだ。
ちなみに、去年のコンサートの収益がPOLLSTARによって発表されたが、トップ20の中で目立つのは、U2、メタリカ、ポール・マッカートニー、ローリング・ストーンズ、ロジャー・ウォーターズなど大御所ロック・バンドだ。しかも、この収益は、史上最高だそう! 去年のトップ20の収益は、26.4億ドルで、その前の年に比べて、2.41億ドルも増えたのだそう。
https://www.pollstar.com/article/pollstar-unveils-top-20-worldwide-tours-of-2017-sets-record-gross-134106
1位 U2
2位 Guns N’ Roses
3位 Coldplay
4位 Bruno Mars
5位 Metallica
6位 Depeche Mode
7位 Paul McCartney
8位 Ed Sheehan
9位 The Rolling Stones
10位 Garth Brooks
11位 Celine Dion
12位 Justin Bieber
13位 Roger Waters
14位 Lady Gaga
15位 Billy Joel
16位 The Weeknd
17位 Tim McGraw/Faith Hill
18位 Red Hot Chili Peppers
19位 Ariana Grande
20位 Tom Petty & The Heartbreakers
現在、定年を迎えている人達は、好きなバンドの単独ライブのみならず、アメリカ中のフェスを飛び回る人も増加しているそう。アメリカのフェス主催者は、高齢のファンが増加していることに対応しVIP用パスの手配を入念に行っているということ。
さらに、若いバンドにも興味を持っている人が多いということ。
「僕らの世代は、レッド・ツェッペリンこそが最高のバンドで、それを超えるバンドはいない。だから、他のバンドは聴く価値もない、と思っている人が多いのだけど、そんなことはない。新しいバンドを聴くことで、自分も今の時代を生きていけるから」
上のリストの中で見ると、若く感じるレッド・ホット・チリ・ペッパーズが去年NYのフェスThe Meadows で3日目トリだったのだけど、そのライブの内容も実際最高だった。いまだに、昔のままのやんちゃさを残しそれでこそレッチリというファンの要望にもしっかりと答え、往年のヒット曲も惜しみなく演奏。バンドとしてこれまでなかったようなグルーブも生み出していて、聴きどころ、見所も満載だったから。これまで何度も観ているのに、素直に最高と思えたのだ。
NYのフェスは、例えば3日間あると、初日は今最も人気のあるメインストリームのアーティストをブッキング(チャンス・ザ・ラッパーや、フランク・オーシャン、JAY-Zなど)、そして2日目は、ポップ・シーンでもロック・シーンでも人気のアーティスト(ゴリラズ、テーマ・インパラなど)、そして3日目は、ゴリゴリのロック(レッチリ、NIN、トゥールなど)をブッキングするというパターンが多い。観客の年齢層が徐々に高くなり、残念ながら、観客は徐々に減っていくことが多い。しかし、このThe Meadowsに関して言えば、初日のJAY-Zから、2日目のゴリラズ、3日目のレッチリまで観客が全く減っていかなかった。3日目のブッキングが、ウィーザー、フォスター・ザ・ピープルなど、その他のロック・バンドも人気があるバンドだったからしれない。
ビルボード誌によると、2017年前半で、音楽の収益全体のうちロックの割合は、わずか23%だったということ。しかし、上の表にもあるように、U2、ガンズ、メタリカ、レッチリのツアー収益は世界的に莫大。より年配のロック・ファンがようやくストリーミングで音楽を聴くようになったので、その数も今後増えるのではと期待されているそうだ。
音楽の未来は、定年退職後の真の音楽ファンにかかっているのかも?