変化への恐怖を乗り越えて

ロスタム『チェンジフォビア』
発売中
ALBUM
ロスタム チェンジフォビア

ここ数年のめざましい活躍によって、瞬く間にアメリカのトップ・プロデューサーとなった、ロスタムことロスタム・バトマングリ。カーリー・レイ・ジェプセン、クライロ、チャーリーXCXソランジュフランク・オーシャン。そして何より、ロスタムとの共同プロデュースで最高傑作を作り上げたハイム

こうして彼が作品のプロダクションに携わったアーティストの名前をざっと挙げてみても、ロスタムが現代アメリカのインディとメインストリームをつないだ最重要人物であることは明らかだろう。今作はそんなロスタムのキャリア2作目にあたるソロ・アルバムだ。

生ドラムとバリトン&テナー・サックスを除き、今作の演奏と歌唱はすべてロスタム自身が担当している。その楽曲から聴き取れる、クラシックの素養に裏打ちされた和声感覚、あるいは、アフリカやイランの伝統音楽などを参照した豊富なリズム・パターンや、ヒップホップとハウスを通過したビート・プロダクションなどに耳を傾けていると、彼がヴァンパイア・ウィークエンド在籍時に果たしていた役割の大きさを、改めて思い知らされるようだ。

「変化への憎悪」を意味するアルバム・タイトルは造語で、実際にこの言葉はアルバム全体のテーマとなっている。社会全体がパラダイム・シフトの最中にある一方、旧態然とした価値観にしがみつこうとする動きも少なくない昨今において、ロスタムはそんな変化に対する恐怖心を理解しつつ、それを乗り越えた先の未来について、この作品で歌っているのだ。

いうまでもなく、それは自分がゲイであることを公にし、ヴァンパイア・ウィークエンドを人気絶頂期に脱退してソロとして歩んできた彼自身の半生を語ったものでもある。(渡辺裕也)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
ご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。

ロスタム チェンジフォビア - 『rockin'on』2021年7月号『rockin'on』2021年7月号

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