東日本大震災の復興に向かって動く姿勢に共鳴し合った細美武士とTOSHI-LOWは、友情を深めるだけではなく、the LOW-ATUSとしてタッグを組んで、カバー曲を弾き語りするライブを行ってきた。まさに旅する鳥のように、フットワーク軽く活動していたので、今回、新レーベルという「家」を立ち上げて、11曲のオリジナル曲を書き下ろし、1stフルアルバムを完成させたことには驚いた。しかし、ジャケットは、「写真は記録だ」という信念を持っていた昭和の写真家・林忠彦の手によるもの。the LOW-ATUSも、2011年以降の日本の風景を音楽に記録し、後世へと届けていくことをイメージしたのかもしれない。

彼ららしい社会的なメッセージのみならず、人生の儚さや、その中のささやかな幸せを、鮮やかな情景に落とし込んだ歌詞。それを、ふたりの力強くも美しいハーモニーが、贅沢に奏でていく。笑い声も収められた“みかん”のような面白ソング（子どもは笑いそうだけど、昭和歌謡な曲調は熟年層にも受けそう）も飛び出す、肩の力を抜いて聴ける、でも心に置き土産を残す作品だ。（高橋美穂）

『ROCKIN'ON JAPAN』7月号より