インタビュー=田中大 撮影=駒谷優
──EBiDANの番組内での企画が、結成のきっかけですよね。オーディションの面接の時も好きなバンドのCDを渡して、「俺、これになりたいんです」と言いました(田中)
髙⽥ はい。得意な楽器を持ち寄って1曲のパフォーマンスを完成させるような企画があった時、ふたりともたまたま同じギターを持ってきたんです。それを見たスタッフさんが、「このふたりで組んでみたら面白いんじゃない?」ってなったのが結成のきかっけでした。
⽥中 改めて考えてみると、めちゃくちゃ適当な理由ですね(笑)。
──アンプ内蔵型ギターのピグノーズをふたりとも持っていたんですよね?
髙⽥ そうです。
──アンプ内蔵型ギターだとZO-3のほうがポピュラーなので、なかなかの偶然かも。
⽥中 なんでピグノーズにしたの?
髙⽥ 楽器屋さんに行って気に入ったのが、それだったんだと思う。
⽥中 ZO-3は有名だし、みんな買うじゃない? だからピグノーズにした。
髙⽥ そっか。
⽥中 ふたりともピグノーズを買ったのは、意外と奇跡かもしれないですね。
──ピグノーズを買っていなかったらSakurashimejiが誕生しなかった可能性がありますよ。
⽥中 そうですね。
髙⽥ 確かに。
──初期はショッピングモールとかでストリートライブをするのが、活動の中心だったんですよね。
髙⽥ はい。結成した日に、「来週からストリートライブをするから」って言われて(笑)。
⽥中 19の曲のカバーとかをやっていましたね。
髙⽥ それまでは集団でライブをやっていたので、新鮮な気持ちでした。ふたりでやるから責任が大きくなって、その分、ライブの楽しさが増えるのも感じていました。
⽥中 そこまで考えてた?
髙⽥ うん、なんとなくだったけど。グループだと1フレーズとかしか歌わないけど、ふたりだとたくさん歌うことになるし、自然と歌い分けは増えるじゃない? だから、自然とそういうことを感じてたよ。
⽥中 なるほどね。僕はただただ一生懸命曲をやることだけにフォーカスしてたから、「ライブをやるのはこんなにも楽しい」という感覚は100%はなかったかもしれない。今、ストリートライブをやったら、すごく楽しいだろうけど。
髙⽥ 当時は、ストリートライブに対する苦手意識はあったかも。
⽥中 ⼤宮アルシェでよくやっていたんですけど、川崎とかでもやっていたんです。「こんなにも足を止めてもらえないんだ」という絶望感はあったよね?
髙⽥ うん。ライブを始めるきっかけも難しかったし。
⽥中 立ち止まってくれるお客さんがいるわけではなかったので、MCをしてみても仕方ないというのもありましたからね。
──ライブハウスは観たいお客さんが集まってくれていますけど、ストリートだと、基本的には通りすがりのみなさんに向けてやることになりますね。
⽥中 そうなんです。でも「中学生がやってる」という物珍しさで足を止めてくださったりはしたので、そういう意味ではズルではあったんですけど(笑)。高校生の部活帰りのお兄ちゃんとかが「何してんの?」って声をかけてくれたりしました。
──フリーライブは、中学を卒業するまで全都道府県でやったんですよね?
髙⽥ はい。ほぼ全部が車移動でした。
⽥中 九州、沖縄だけは飛行機で行って、現地を車移動しました。
髙⽥ 北海道もそうでしたね。
⽥中 四国までは車で行きました。
髙⽥ 運転してくださったスタッフさんに感謝しています。パワフルでしたね。スタッフさんも含めて4人とかでハイエースで移動していました。
⽥中 とにかく「まずは人前で歌う」という経験をたくさん積ませていただきました。
──EBiDANの仲間はダンスボーカルグループとして活動する人が多いですが、ギターと歌に専念することに関しては、どのように感じていましたか?
⽥中 僕はもともとバンドをやりたくて事務所に入ったので、「よかった! 音楽ができる!」って思っていました。オーディションの面接の時も好きなバンドのCDを渡して、「俺、これになりたいんです」と言いましたから。クリープハイプが好きなんです。
──彪我さんは、どういう活動をしたくて事務所に入ったんですか?
髙⽥ 僕はスカウトだったんですけど、もともと芸能界への憧れがあって、母の影響で嵐が好きで、櫻井翔さんになりたいと思っていました。だからダンスもやっていたんですけど、バンドの曲も好きでした。兄がバンドが好きで、父も高校の時に軽音部でギターを弾いていたので、子供の頃からバンドの音楽や楽器が身近な存在だったんです。
──どんなバンドの音楽を聴いていたんですか?
髙⽥ ASIAN KUNG-FU GENERATIONさん、BUMP OF CHICKEN さん。あと、ボカロのバンド系の音楽も好きでしたね。
⽥中 ふたりともルーツがバンドの音楽なんです。僕らのライブもバンドでやっています。
──弾き語りでやる機会も多いですよね?
田中 はい。ふたりで弾き語りで回るツアーも毎年春にやっています。ふたりだとどこでもやれるので、ギターと僕らがいればライブを成立させられるフットワークの軽さがあるんですよね。弾き語りもすごく面白いし、バンドも楽しいです。
──今年の6月に結成10周年を迎えたんですね。お芝居は他の人の心情にも寄り添う表現なので、いろいろな視点になるというか。だから演技が音楽に活きることもありますし、その逆もあると思います(髙⽥)
髙⽥ はい。でも、10年とはいえ、最初の頃は言われたことをただやっていたので、「自我が芽生えたのは、最近です」とよく言っています(笑)。
⽥中 中学の時は同世代のバンドがいなくて、高校に入ってからも軽音部でバンドをやっている人はいても、イベントとかで一緒になる同世代はいなかったんです。ようやくここ最近、仲間ができてきたのが嬉しいですし、切磋琢磨したいと思っています。
──同世代のバンドに、「俺たち、10年やってきたんだぜ」と先輩風を吹かせられますよ。
⽥中 とんでもないです!(笑) 自我が芽生えたのは最近なんですから。高校の頃から自分の音を追求してきた人たちを羨ましく感じますし、そういうみんなは音楽的に強いと思います。僕らはずっとギター2本でやってきたので、他の楽器の音にも耳を傾けていろいろ考えられるようになったのは、この2、3年なんです。
──活動を重ねる中で、歌とギターのスキルが上がって表現の幅が広がる喜びは、ずっと感じてきたんじゃないですか?
髙⽥ そうですね。やっぱり楽しいですから。僕は最近、エレキギターを弾くのが楽しくて、アコギを持つことが少なくなっています。
──彪我さんは、ギターのスラッププレイをしますよね? 2019年の日比谷野音のライブでやっていたのが印象に残っています。
髙⽥ 懐かしい(笑)。MIYAVIさんリスペクトでやりました。今は、ジョン・フルシアンテにも憧れています。
──雅功さんが主に弾いているのは、アコースティックギターですよね?
⽥中 はい。曲によりますけど、ほとんどがアコギですね。
髙⽥ 田中さんのアコギのバッキングには敵わないです。力強さが魅力的で、ずっと聴いていたくなります。
⽥中 いきなり褒めるの気持ち悪い(笑)。アコギがあるとバンドサウンド全体の空気感が変わるんですよね。中学生の頃はそういうこともわからず、言われるがままにただ弾いていたんですけど。まだまだ未熟者ではありつつも周りが見えるようになってきたので、サウンドの捉え方は変わってきました。アコギでもいろいろな音が出せますので、楽しさも広がってきています。自分で言うのもなんですけど「音楽、好きなんだなあ」って感じます。
──インタビュー前にリッケンバッカーを弾いていましたけど、そういう姿からも音楽が好きな様子が伝わってきました。リッケンは、ギターが好きじゃないとなかなか選ばないですから。
⽥中 ありがとうございます。
髙⽥ 何年前に買ったんだっけ?
⽥中 4年くらい前。尾崎世界観さんが、赤のリッケンバッカーを弾いているのがかっこよくて、「一緒のが欲しい」と思って、お金を貯めて買ったんです。
──彪我さんは、フェンダーのストラトキャスターを愛用していますが、ジョン・フルシアンテに憧れているからですか?
髙⽥ はい。
⽥中 ずっとレッチリの曲を弾いていますからね。
髙⽥ 言われると恥ずかしい(笑)。この前の来日公演が、めちゃめちよかったんですよね。さらに好きになっちゃいました。音楽は知れば知るほど楽しくて、ギターも知れば知るほど欲しくなっちゃいます。ギターは、何本あってもいいですからね。
⽥中 怖いんですよ。買い出すと止まらないから。金利ゼロは、ローンでもタダなんでしょ?
髙⽥ うん。48回払い、金利ゼロは、タダだと思うことにしています(笑)。
──(笑)。彪我さんは俳優としてもご活躍ですが、音楽とはまた別の表現の場があることを、どのように捉えていますか?
髙⽥ どちらも表現をするお仕事なので、感性が広がって幅も広がっているんだと思います。お芝居は他の人の心情にも寄り添う表現なので、いろいろな視点になるというか。だから演技が音楽に活きることもありますし、その逆もあると思います。
──演技も他のキャストのみなさんとのアンサンブルという点では、バンドと通ずるものがありますよね?
髙⽥ そうなんです。そこに難しさもあるんですけど。
──雅功さんは、小説を書いていますね。演劇とライブが組み合わさった「春しめじのお花し」の台本も書いているんですか?
⽥中 はい。文章を書くのは、昔から好きでしたね。そういう機会もどんどん増やしたいです。小説を読むのとお芝居を観るのも昔から好きなんです。伊坂幸太郎さんと、ラーメンズの小林賢太郎さんが好きです。
──「表現する」ということが好きなのが、雅功さんと彪我さんの共通点なのかも。
⽥中 何かを作るのが好きなんだと思います。自分を知ってほしいのかも(笑)。
髙⽥ そうだね。最新アルバムの『ゆくえ』も、ほぼ半分くらいが僕たちが手掛けた曲です。
──『ゆくえ』に収録されている“エンディング”は、彪我さんの作詞作曲ですね。彪我さんの曲は、胸の内に渦巻く想いを描くことが多いという印象です。
⽥中 自己啓発系というか、わりと哲学だよね?
髙⽥ そうですね。Sakurashimejiで、そっちを担当しています(笑)。