【インタビュー】ギターデュオ・さくらしめじが「Sakurashimeji」として初めて紡ぐメッセージソング“明日を”──10周年を経た今、⽥中雅功と髙⽥彪我が語る覚悟と決意とは

【インタビュー】ギターデュオ・さくらしめじが「Sakurashimeji」として初めて紡ぐメッセージソング“明日を”──10周年を経た今、⽥中雅功と髙⽥彪我が語る覚悟と決意とは

“明日を”というタイトルもそうですけど、「これまでのこと」というよりは、「これからのこと」を歌いたいと思っていたんです(田中)

──雅功さんの曲は、物語的ですね。今年に入ってからリリースした“⼤好きだったあの⼦を嫌いになって”、“ただ君が”も、そういう作風を感じます。

⽥中 そうなのかもしれないですね。

髙⽥ 雅功は昔から小説が好きで、書いてもいますから、物語の流れを作るのが上手いんです。素敵だなと、毎回思っています。4月に配信リリースした“生きるよ”は僕が作曲をして、雅功に作詞をしてもらったんですけど、この曲も歌い出しから攻めてます。《遠ざかる雲とその向こうに/王様と人々の群れ》ですから。

──雅功さんは、彪我さんの作る曲や歌詞を、どのように感じていますか?

⽥中 彪我は、あっけらかんとした性格なんですけど、そのわりに皮肉めいたものを書いてくるんです。そこが好きです。17か18の頃に書いた“青春の唄”という曲があるんですけど、《たった一秒でも/無駄にできないなんて嫌だよ》と書いてきたんですよね。普通は「たった一秒でも無駄にしたくない」って書くんでしょうけど、「無駄にできないのが嫌だ」というのがすごく彪我ならではの感性だなと思いました。“エンディング”も、《「もしも悩んでしまったなら/あなたらしく生きなさい」と言う/過ぎ行く小節の中で/僕らしさはどこにある?》という部分があるんですけど、「自分らしく生きなさい」と言われることに対しての身動きの取りづらさを歌詞にしているのが印象的で、「俺には、こういう視点はないな」と思いました。あと、彪我は作曲に関して器用で、いろいろな音楽の要素を取り入れるんです。デモの完成度が高いので、デモの段階で「どういう曲にしようか?」とスムーズに話し合うことができます。

──様々なクリエイターから提供された曲を歌ってきた経験も、おふたりの創作に活きているんじゃないですか?

⽥中 そうですね。最初の数年は「今はいろんな曲を吸収しなさい」と、スタッフさんも言ってくれていたんです。提供していただいた曲を歌って弾くからこそ気づくことがたくさんあって、知らない内に自分たちの中に蓄えられていった音楽的な要素が、たくさんあったと思います。

──今年に入ってからリリースした曲は、共作も含めて自身が手掛けた曲ですね。

⽥中 はい。ようやく書けるようになったというか、リリースできるものを作れるようになったんだと思います。お互いの曲に対して、意見もいろいろ言えるようになりました。

──最新曲の“明日を”は、作詞作曲のクレジットが「Sakurashimeji」ですから、ふたりの共作ですね。

⽥中 はい。6月に10周年を迎えたんですけど、そのあとの最初の曲だったので、すごく難しかったです。良くも悪くも「10周年」ということを踏まえた意味が出てきちゃう曲になると感じていたので。ふたりでデモを出し合って話し合いながら半年くらいかけて作ったよね?

髙⽥ そうだったね。かなり時間をかけました。

⽥中 最終的には僕のデモに対して彪我から意見を言ってもらって、ふたりで一旦崩して作り直していく感じでした。

──歌詞に関しては、どのようなことを話し合いましたか?

⽥中 僕たちの中に音楽的な自我が芽生えたのが比較的最近ですし、10年やってきたとはいえ、まだ22歳なので若いですし、「10周年をお祝いする」「10年間を振り返る」ということにはしたくなかったんです。それよりも、20周年、30周年、40周年とかのことを歌っておきたかったというか。そういう話をしていましたね。

──「こういう生き方をしていきたい」という今の気持ちであると同時に、「これからもこうありたい」という未来像も描いた歌詞ということでしょうか?

髙⽥ まさにそうです。

⽥中 “明日を”というタイトルもそうですけど、「これまでのこと」というよりは、「これからのこと」を歌いたいと思っていたんです。

──本当の気持ちに蓋をして隠している状態を「カサブタ」と表現していますが、傷つくことを恐れずに生きていきたいという姿勢がとても伝わってくる曲です。

⽥中 子供の頃は怪我をするとか全く考えないで外を走り回って無茶なことをしながら遊んでいたのを思い出したんです。いつの間にか傷を作るのが怖くなって、一歩を踏み出せなくなっているのがもったいないと思いました。子供の頃のガッツをこれからも持ちたいと思ったのが、この歌詞のきっかけでしたね。

【インタビュー】ギターデュオ・さくらしめじが「Sakurashimeji」として初めて紡ぐメッセージソング“明日を”──10周年を経た今、⽥中雅功と髙⽥彪我が語る覚悟と決意とは

10周年は節目に見えると思うんですけど、全然そんなことはなくて。新しい日記を書いていく感じ(髙⽥)

──ふたりの歌も生々しいです。終盤辺りから叫びにも近い切実さを帯びてくるじゃないですか。

髙⽥ そうですね。メロも相俟って、そういう感じになっていると思います。最後のほうの《僕らは ここから 明⽇に ⾏きたいんだよ》とか、レコーディングでも痺れました。僕は歌に関しては、雅功に引っ張られることがよくあるんです。「感情で歌ってる」みたいなことが伝わってくるので。

⽥中 彪我がいるから、前のめりな感じで歌っても僕は倒れないで済むんだと思います。「それ以上行くなよ」というような命綱になってくれているんですよ。最初の頃は、ライブ中に僕が突っ走って勝手に転ぶ感じのことがよくあったんですけど。

──“明日を”は、サウンドの熱量もすごいです。緩急を利かせつつ、終盤でものすごい熱量を帯びる展開ですね。

髙⽥ プロデュースをしていただいた⾺場俊英さんとアレンジャーさんと一緒にアレンジについてじっくりとお話をしながら作っていきました。

──《今 今 全⾝全霊 ⼼を痛めて》の直後の一瞬の間が、それ以降のドラマチックさを高めていると思います。

髙⽥ そこ、いいですよね。そこから落ちサビに入っていくのが、めちゃめちゃ緊張するんです。この曲を6月のワンマンライブで初披露したんですけど、歌詞が当日に決まったんだよね?

⽥中 ライブの前日かな。前日の夜。

髙⽥ ほぼ当日に決まったようなものだったので、ものすごく緊張しました。この曲のギターソロは、ライブで弾いたものをそのままレコーディングでやったんですけど、「上手さとかは気にしないで、感情のまま弾いて」と雅功に言われたのを覚えています。思いっきり弾かせてもらいました。

⽥中 僕らはそういうのを大事にしたいんです。才能に溢れているわけではないので、着飾るみたいなことがどうしてもできないんですよね。超人にはなれないから、すごく頑張った一般人になりたいです。そういうのも「自我が芽生えた」ということなんだと思います。

髙⽥ 昔は「どんなものにだってなれる!」って感じていたんですけどね。僕に関して言えば、どうしても陽キャな性格にはなれないですし。でも、それは自分の味だったりするんだろうなというのを音楽を通じて感じるようになりました。

⽥中 とにかく自分を出したいんですよね。それは僕らの歌でしかないんですけど、きっと聴いてくださるみなさんの歌にもなると信じています。そういう方々をひとりでも増やしていきたいです。10年やってきて、ようやくそういうことが見えてきました。なんか不思議な感じもあります。音楽は仕事ではあるんですけど、「100%仕事として認識しているのか?」と言われれば、意外とそうでもなくて。楽しみつつ何かを伝えたい気持ちがすごくあるので……不思議な仕事ですね。

髙⽥ 僕も音楽とか表現は、苦しんでやりたくないんです。まずは自分が楽しむというのは、今後も大切にしていきたいです。

⽥中 苦しんだことも結局は歌にして歌っちゃえば、全部プラスになるんです。そこも音楽の面白いところです。そういうのがあるから音楽をやっててよかったって思います。毎日発見があって学ぶことがたくさんあるので、そういうものを活かして形にしていけるのは喜びです。

髙⽥ いろいろ吸収していきたいですね。アレンジャーさんにお願いしているアレンジも今後は自分たちでやれるようになっていきたいですし、学びたいことがたくさんあります。

──“明日を”のリリースのタイミングでグループ名の表記を「さくらしめじ」から「Sakurashimeji」に変更するのも、さらに進化していきたい気持ちの表れですか?

⽥中 はい。10周年ですけど振り返ることはしたくなくて、どんどん次に向かって行きたいんです。「新たな一歩を踏み出す」というのをわかりやすく示したくて、僕らの覚悟と決意をどこかに残しておきたくて、表記を変えることにしました。「新たにここからさらに積み上げていく」という意味を込めています。

髙⽥ 10周年は節目に見えると思うんですけど、僕たちにとっては全然そんなことはなくて。なんなら毎年おめでたいというか(笑)。毎年を迎えられるのがありがたいですから。表記が「Sakurashimeji」に変わっても、今までのことを捨て去りたいということではなくて、新しい日記を書いていく感じというか。そんな感覚ですね。

⽥中 毎日の中で起こることの分だけきっと曲ができるので、全力投球でやっていきたいです。もし別の向いている仕事が見つかったとしても音楽はやめないと思います。僕らは音楽がめちゃくちゃ好きでやっているので、同じように音楽が好きな方々にも感じるものはあるんじゃないかと思います。こんなふたりなんで舐められやすいんですけど(笑)。食わず嫌いせずに聴いていただきたいですね。

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