ノスタルジックなイノセンス

ザ・ゴー!チーム『ゲット・アップ・シークエンセズ・パート・ワン』
発売中
ALBUM
ザ・ゴー!チーム ゲット・アップ・シークエンセズ・パート・ワン

思い切りポップでカラフルなパーティ・ミュージックでキッズを笑わせ、踊らせてきたザ・ゴー!チームもデビューから20年が過ぎた。作品ごとに音楽性の拡張やカラーの変化はあるものの、ビンテージなヒップホップをベースとして懐かしいサウンドをアナログな響きで横断していくという基本路線は変わることがない。

その変わらなさはある意味で「子どものままでいる」ということで、どのような時代のどのような状況でも無邪気であることを貫くというのは並大抵のことではない。世界が未曾有の事態にある現在であればなおさら、彼らのチャイルディッシュなダンス・ミュージックはキラキラしている。

通算6作目となる本作もまた、オープニングの“Let the Seasons Work”から、ザ・ゴー!チームの「節」が炸裂している。ゆるいグルーヴのブレイクビーツにローファイな音質、高らかに鳴らされるブラスとフレンドリーでチャーミングなボーカル……。

バンドの中心人物イアン・パートンのクラシック・ポップスへの愛着は相変わらずで、60年代のガールズ・ポップを再訪しつつ、それをオールドスクール・ヒップホップと多国籍的なクロスオーバー感覚でミックスする手腕はたしかなものだ。ザ・モンキーズとエンニオ・モリコーネの出会いだと説明されているけれども、なるほどアナログ・テレビで観たスパイ映画のように、子ども時代の混じりけのない興奮をそのままパッケージングしたようだ。
 
そしてこの懐かしさは、人が集まって路上で踊ることの幸福をリスナーに強く喚起させる。それは現在もっとも失われたものだからだ。彼らのブロック・パーティへの変わらぬ憧憬はいま、パンデミック以降の眩いノスタルジアであり、同時に未来への純粋な希望だ。(木津毅)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
ご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。

ザ・ゴー!チーム ゲット・アップ・シークエンセズ・パート・ワン - 『rockin'on』2021年8月号『rockin'on』2021年8月号

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