『暗黙の序曲』(2016年)発表後のカンサスが、『永遠の序曲』(76年)再現ツアーに続き行った『暗黒への曳航』(77年)全曲演奏ツアーの記録。
このライブ作品には2018〜2020年のバンドの姿が収められている。約40年前の名作発表時に比べれば、ボーカルなど多くが入れ替わり、70年代黄金期のメンバーはふたりしか残っていない。だが、プログレらしい練られたアレンジとキャッチーな歌メロを融合したバンドの美点は、存分に表現されている。全体としては『暗黒への曳航』再現の前後に他の代表曲を置いた構成だ。
終盤で当時の新曲“逃亡者”の後、「サンキュー、スティーヴ・ウォルシュ」と告げてからデビュー作『カンサス』(74年)の“寂しき風”で締めくくっているのが印象的。かつてのバンドの中心人物へ感謝を述べる彼らは、確かにカンサスの音楽の核を受け継いでいる。(遠藤利明)
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