アリーナツアー「AIMYON TOUR 2020“ミート・ミート”」の、12月13日のさいたまスーパーアリーナ公演を全25曲、完全収録した映像作品。改めて思うのは、あいみょんの表現って、どの角度をとっても「生」なのだ。アコギと歌というスタイルも、吐き出すようにエモーショナルな歌い方も、鮮やかに心情や情景を描写する歌詞も、飾らない人間性も。ライブでは、それが際立つ演出が、曲順や照明や音響から感じられる。音源で聴くと、ポップスらしく少々まろやかになるのだけれど、ライブになると画面越しであれ、生々しさに圧倒されるし、これほどフォーク的な世界観を現代に響かせた彼女の信条と才能に、唯一無二のものを感じずにはいられない。とは言え、年齢も性別も時代も超越する存在感は、現代にジャストでもある。このライブでも、オーディエンスと新たなコミュニケーションを交わしており、とてもたくましい。“マリーゴールド”で、マスク姿で手を揺らす客席に咲き誇った笑顔は、すべてを物語っているようだった。やはり、港で食べる刺身のように、あいみょんの表現はライブで生きるのだ。（高橋美穂）

『ROCKIN'ON JAPAN』8月号より