ロックンロール、目の前を塗り替えろ

The Birthday『サンバースト』
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The Birthday サンバースト
たとえば、《コカコーラのみさし あきびんにスイセンカ》(“スイセンカ”)というライン。コーラは飲み止しなのか? 空いているのか? たとえば、《言葉の幻想はもう終わったって》(“ショートカットのあの娘”)や《支離滅裂なのは百も承知さ》(“ギムレット”)という直接的な宣言。近年、作品を重ねるごとにメッセージ性を強めてきたチバのリリックが、本作では極めて抽象性の高いものとなっている。もちろん、リトル・リチャードの“トゥッテイ・フルッティ”やT・レックス“メタル・グルー”といったクラシックを例に挙げるまでもなく、元来ロックンロールは必ずしも言葉の意味を要しない。むしろ、鳴っている間だけ聴き手の憂鬱を霧消させるその効能に靄をかけるくらいなら、意味などないほうがいい。ライブが制限される中スタジオで練りに練り上げたと思しき多彩なリズムを誇る11の楽曲で、チバはそんなロックンロールの原則に立ち返っている。そして、なぜ今そうするのかを、本作の中で唯一明確に聴き手に向けられたラインで、チバはこう歌う。《お前の想像力が現実をひっくり返すんだ》(“月光”)。傑作。(長瀬昇)

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