2022年に迎えるデビュー30周年を記念して、30曲を選んでセルフカバーする旨を先日発表したウルフルズ。その第1弾が本作だ。“バンザイ～好きでよかった～”や“かわいいひと”などはラブソングとしての不朽の輝きを示すと同時に、なんとも言えない優しさを滲ませている。理想通りにはいかない人生への向き合い方を描いた“笑えれば”が一層の説得力を帯びたように感じられるのは、歌っていることへの確信がメンバー各々の中で深まったからなのだと思う。ストリングスが加わった新アレンジによって祝祭感を漂わせている“それが答えだ！”は、30周年という節目に向けての昂揚感を爽やかに煽ってくれる。昔の曲に向き合うのは、当人たちにとっては照れくささもあるだろうが、常にかっこいいバンドであり続けられたことを再確認できる機会にもなったのではないだろうか。そして、彼らが今でも唯一無二の存在であることを実感できるのは、リスナーにとっても嬉しい体験だ。今後も続くこのセルフカバーのシリーズで、お馴染みの曲たちがさらにどのような色合いを浮かべるのか？ 期待が大いに高まる。（田中大）

『ROCKIN'ON JAPAN』9月号より