今春、初めてyamaのライブパフォーマンスに触れた時、想像以上に表現力豊かな歌声に圧倒された。メジャー進出後はさまざまなソングライター陣による楽曲を歌っているから、という理由もあるだろう。そして遂に、yamaの表現力の奥行きを知らしめる初のアルバムが登場。けたたましく性急なロックチューンから切ないスローバラード、yamaのうっすらとブルーが滲んだ美しいハスキーボイスと技巧派の作曲が手を取り合うビートポップまで、やはり1曲ごとに多彩な表情と出会う作品になった。リスナーのその時折の気持ち次第で、歌の意味や価値が都度変化する、そんな懐の深さを備えたアルバムである。華麗な多重コーラスをデザインしたESME MORI作“血流”や、ジャジーなファンキーポップで巧みにyamaの感情の起伏を引き出すADA作の“希望論”といった初出曲が素晴らしいことからも、このアルバムのふくよかさが伝わると思う。本編最後のナンバー“天色”では、yama自身もBCNOと共作する形で作詞に参加。成長し続ける可能性の余韻を引き摺りながら、yamaはライブツアーへと乗り出す。（小池宏和）

『ROCKIN'ON JAPAN』10月号より