5月28日に中野サンプラザで行われたラストライブ「THE PARK」は同時に、昨年のツアーがコロナ禍の影響で中止となった赤い公園にとっては、アルバム『THE PARK』の楽曲を観客とライブの空間で共有できた唯一の場でもあった。

小出祐介（G／Base Ball Bear）、キダ モティフォ（G／tricot）、堀向彦輝 a.k.a. hico（Key）をサポートに迎えて最後の舞台に臨んだ石野理子／藤本ひかり／歌川菜穂の3人。“絶対零度”や“yumeutsutsu”など『THE PARK』の楽曲群をはじめ、“絶対的な関係”“風が知ってる”“オレンジ”“pray”といったシングル曲、さらに“今更”“のぞき穴”を含むメドレー、中盤の石野・藤本・歌川の3人ユニット「さんこいち」セッションに至るまで、実に全29曲。和気藹々と語り合いながら、その音楽世界を全身で謳歌し、一音一音噛み締めるように演奏していく姿が、ライブが進むごとに静かに胸に迫る。そして、鮮烈で鋭利で情感豊かな楽曲の数々を奏でるバンドサウンドは、この場にいない津野米咲の存在と才気をよりいっそう明確に立ち昇らせるものだった。（高橋智樹）

『ROCKIN'ON JAPAN』11月号より