今年4月にデジタルリリースされた『ENTERTAINMENT!』に続くアルバム。ライブに音源制作にとバイタリティ全開の活躍を見せる中でのリリースとなったが、紛れもない大傑作である。『COYOTE』(2007)を1作目として数えるとTHE COYOTE BANDとして6作目のアルバムに当たり、メンバーも増えて現在は小松シゲル(Dr)、高桑圭(B)、深沼元昭(G)、藤田顕(G)、渡辺シュンスケ(Key)という手練揃い。この面々が、年長のスーパースターである
佐野元春と対話を重ねセッションを重ね、前人未到のロック風景に到達したという事実が感慨深い。もしかすると佐野元春は、後続世代をインスパイアしこんな作品を生み出すために、そのキャリアを歩んできたのではないか。シリアスなのに軽やかで、リッチで味わい深いのに全然カドが取れていない、挑発的な実験精神がポップな華やかさと表裏一体になったロック。全編からバンドの驚くべき化学反応が溢れ出している。シュガーコーティングされた言葉と音ではなく、研ぎ澄まされた言葉と音こそがロックの大衆性を獲得するという証明のアルバムだ。(小池宏和)
『ROCKIN'ON JAPAN』9月号より