このアルバムに収録されている10曲から伝わってくるものは、とにかく明快極まりない。「気持ちいい音を浴びるのは最高！」ということに尽きる。エネルギッシュに躍動するビート、シンセサイザーの華やかな音色、ジャキジャキとしたエレキギターの鋭い刻み、飛ぶ鳥を失神させそうなハイトーンボイスが一体となって生まれているのは、アドレナリン分泌を果てしなく促進してくれる刺激の塊だ。そして、人力演奏によるバンドだからこその風味も、本作を語るうえで大切なポイントなのだと思う。演奏すればするほどプレイヤー自身がトランス状態に陥り、そのニュアンスが音に反映されてしまう現象は、機械によるプログラミングでは絶対に起こり得ない。演者が感情を持っているがゆえに良くも悪くも不正確なブレが発生する人力サウンドは、リスナーとして耳を傾けている我々の心拍数の上昇と自然な形でシンクロする。このような人肌の温度を帯びたダンスミュージックを奏でることに全力投球をし続けているthe telephones。彼らのかけがえのない存在感を再確認させられるのが、今回のアルバムだ。（田中大）

『ROCKIN'ON JAPAN』10月号より