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1年半ぶり、3枚目のオリジナルアルバムであり、様々な状況を乗り越えた復活作であり、メジャー第1弾リリース。情報てんこ盛りだが、音楽的にもSAKURAmoti 、白神真志朗、シンリズム、トオミヨウといったアレンジャーが参加し、今作を彩っている。そして、それら以上に驚かされるのは、華やかなアレンジの中で、小林私の血肉のような歌声、「詩」として読み解きたくなる歌詞が際立っているところだ。ジャジーでダンサブルな曲調で《口に出せば堪らない悪臭を放ちながら/日々を彩る美しさの輪郭を象ろうとしている欲》といった歌詞を時折グッと力んで歌う、さらに裂け目から別の顔を覗かせる転調を見せる“可塑”は、頭を使いながら聴きたい構造を持っている。それでいて、《最低なことばっかりですがこの世を儚めやしないから/再会を喜べる束の間をどうか君と楽しんで、》という人間味を感じるブルース“花も咲かない束の間に”は、素直に心に染みる。あらゆる小林私が象形――かたどられた、新たな船出に相応しい作品。(高橋美穂)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年8月号より抜粋)
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