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ポップの情報量の極北に挑んだ怪物作『天才の愛』を経てくるりが向かったのは、結成時のメンバー森信行を迎えたトリオで、今一度「くるりとは何か」を問い直す作業であった。ジャムセッションから発展させた楽曲も多く、3人の内に蓄積された音楽的嗜好や経験、そして3人の間だからこそ生じる化学反応が自然と曲に染み出しているような印象を受ける。その結果、2000年代以降のボブ・ディランの傑作群の隣にそっと並べたくなるような、ルーツと今日が直結して発光する最高級の大衆音楽が仕上がるのだから、心底とんでもないバンド、音楽家たちになったものである。とりわけ、確かな技巧とやぶれかぶれの熱量とが合わさり爆ぜながら疾走する“馬鹿な脳”と無条件に脳と腰を揺さぶってやまないダンスナンバー“お化けのピーナッツ”は大名曲。「くるり」の意味をひたすらに拡げてきたバンドゆえに掴めた、自然体にして最強の「くるりplaysくるり」。聴き手にとっては当然のこと、本人たちにとっても幸福な作品となったのではないか。(長瀬昇)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年11月号より抜粋)
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