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蛍は発光する虫だが光を嫌う。秋山黄色が7月にリリースした曲は“蛍”、続くツアーは「走光性の鳴り方」。走光性とは昆虫などが光に反応して移動することを指す。そのツアーで初披露されたのが新曲“SCRAP BOOOO”で、《蛾なのか蝶なのかぱっと見わからん》と歌われているが蛾はまさに走光性の象徴のような生き物……とまあ虫の生態について長々書いたが、この一連の流れはそのまま秋山黄色に当てはまる気がする。苦悩の季節を越えた彼は、この曲でまさに光に向かって音を鳴らしているのだ。“SCRAP BOOOO”では、ラフなカッティングギターに乗せてスタートを切ったメロディがコラージュ的なトラックの上を時に転びながらも走り続け、ゴール前で《順調に間違いだらけのパーツで出来ていく きっと/そんな君しか知らない倫理を どうか どうか 捨てずにいて》という宣言とともに美しく飛翔する。“蛍”で《もう光がきっと 肌に合っていない》と沈んでいた秋山黄色は今、光を求め飛び立ちながら自ら発光し、《君》の孤独を再び照らし始めた。(畑雄介)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年2月号より抜粋)
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