冒頭から言っちゃうけど、3rdアルバムにして最高傑作だと思う。今までの楽曲も、歌メロは立っていたし、十分ポップだったと思うけれど、そのインテリジェンスに富んだサウンド・ワークの印象が強くて、少し敷居が高いような気がしていたのだ。しかし今作は、入り口は広く奥行きは果てしない、理想的な仕上がりになっている。それを成し得ている大きな要素が、想像力を掻き立てるような歌詞と、サウンドに埋もれない強いメロディの融合である。さらに、随所随所でSEが効果的に使われていることも相俟って、映画を観ているようなドラマティックな流れになっているのだ。永野の独特の柔らかな声質も、歌としても音としても捉えられるような、見事な生かされ方をしている。特に“ゆりかご”は、言葉、声、メロディ、サウンドの全てが、幸せな化学変化を起こしている。そしてラストでは、チャーミングな音色とメロディが彩る“五億回の瞬き”で《いつでもここへおいで》と優しく呼び掛けて締め括られるのだ。聴き終えると、心に芸術という栄養剤を染み渡らせたような心地よい感覚に陥ることができる。(高橋美穂)