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映画『九龍ジェネリックロマンス』主題歌。この作品の舞台「九龍城砦」は、20世紀末まで香港に実在したあの地域ではない。ノスタルジックな要素と最新のものが混在している物語上の架空のエリアだ。“HAZE”に耳を傾けると、ミステリアスなあの街で過ごしているような感覚となる。歌の中で登場するのは《室外機》《電線》《信号》《褪せた壁》など、侘しさと結びつく要素ばかり。しかし、濃密なグルーヴとともに受け止めると風景や色彩が目に浮かび、生活臭までも嗅ぎ取った気がしてくる。どこか懐かしさのあるファンク、ソウルミュージック的なアンニュイなメロディが無国籍感を加速していることも含めて、この曲は映画にぴったりだ。タイアップは創作の新鮮なインスパイア源となり得る。7月にリリースした“Method”もアニメOPテーマとして抜群だった。ブラックミュージックを独自の味つけで料理する達人・Kroiにとって、主題歌などの書き下ろしは今後ますます腕を振るえる場となっていくかもしれない。(田中大)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年11月号より)
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