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この曲を聴くとあの当時を思い出す──そんなふうに、記憶と密接な音楽がある人も多いはず。きっとある時期に繰り返し聴いていたからこそ、自然と思い起こされるのだろう。しかしkurayamisakaの新作は、初めて聴いたにもかかわらずどこか懐かしさを感じ、過去の風景がふと浮かんだ。まだ曲とともに重ねた時間はないのに不思議だった。歌詞のほとんどに《あなた》《君》という言葉がちりばめられている。相手を思い、その思い出にふけ、この先の情景・未来を思い描いている。《春》《夏》《校舎》《標識》などトリガーとなる単語はあるが、特定の一場面を切り取った曲はない。この抽象的な誰かの物語に、オルタナティブロックのギターサウンドの鋭さと哀愁、どこかキャッチーで親しみもあるメロディ、そして内藤さち(Vo・G)の優しい歌声。これらが絡まり合うと、聴き手の一つひとつの思い出に結びつくのだ。アルバム名と同じ“kurayamisaka yori ai wo komete”から始まる全12曲。そこに込められた愛が、私たちの過去に溶け込んでくる。(成瀬諒花)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年11月号より)
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