いつもの奇跡が鳴っている

ザ・クロマニヨンズ『グリセリン・クイーン』
2009年10月07日発売
SINGLE
結成以来、毎年アルバムを1枚出して全国ツアーを回って、という実は律儀なペースを崩さないザ・クロマニヨンズの、これが今年初のシングル。70年代の女性ロッカー、スージー・クアトロの曲名を拝借したとおぼしきタイトル曲“グリセリン・クイーン”は、マーシー作の軽やかでセンチメンタルなロックンロールだ。《グリセリン・クイーン/生きているうち できる事は何でも/グリセリン・クイーン/やってしまう 毎秒が伝説》。とことん削ぎ落とされた言葉数と単純極まりないメロディから立ち上る、パンクの気骨とピュアな物語。それは言ってしまえば「いつものクロマニヨンズ」なのだけれども、本当は「いつもの奇跡」みたいにあり得ないことで、ヒロトとマーシーはもうずっとそういう場所に立っている。でも彼らは進化を止めたわけではなくて、好き放題に遊んでいるような顔をしながら、たぶんいつも次の企みを考えている。だからドキドキするのだ。そこがすごい。次のアルバムは全曲モノラル録音で、テーマはずばり「ロックンロールへの回帰」だと聞いた。考えただけで、今から心がヒリヒリする。(松村耕太朗)