2010年代の口火を切る危険な音塊

ナイス・ナイス『エクストラ・ワウ』
2010年02月17日発売
ALBUM
ナイス・ナイス エクストラ・ワウ
ワープが送り出すポートランド出身の新人デュオ。すでに昨年海外で開催されたWarp20でお披露目済みで、同時期に限定7インチでデビュー。その際の印象は、ノー・エイジやヘルスに通じるハードコアなノイズ・ロックと、ギャング・ギャング・ダンスやハイ・プレイシズらブルックリン周辺のサイケデリックなトライバル・ポップが隣り合わせたような、得体の知れないものだった。マイスペースで公開された他曲には朴訥としたフォークもあったり。で、それから程なくして届いたファースト・アルバムが本作。全13曲を聴き、その得体の知れなさはすべて確信犯だったと納得した。実際の話、彼らのサウンドは現在のインディ・ロックの“美味しいところ”をかなり的確に突いている。それは第一印象で挙げたバンド名からも明らかだが、他にもシューゲイズなノイズ趣味や、M8、M9辺りに顕著なクラウト・ロック~カンタベリー風。ループを駆使したアプローチはバトルスにも通じるし、エレクトロのガジェット感はブラック・ダイス……つまりは広義のボアダムス・チルドレンとして、彼らはかなりの血統種といえる。そこには、ポートランドというインディの坩堝で揉まれたならではのバックボーンを感じるし、また同時に現在のワープの勢いみたいなものも感じられる。昨年末のライブではウェーヴスやブラック・ジャックスと共演。すでに状況はできつつある感もあるが、本作のリリースで彼らの名前は広く世界に知られることになるだろう。個人的には、レーベルの看板を破壊するぐらいにもっともっと無茶やって暴れてほしい。あとはとりあえずライブ見せろ。(天井潤之介)
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする