笑って世界を抱擁するBT

BUCK-TICK『独壇場Beauty』
2010年03月24日発売
SINGLE
BUCK-TICK 独壇場Beauty
ノイジーでインダストリアルなパーカッションで2010年代をノックする28枚目のシングル『独壇場Beauty』。ぶっちぎりなタイトル通り、今井節全開のパンクでキッチュなポップ・チューン。前二部作シングル『HEAVEN』、『GALAXY』は、壮大で厳かな天界図のような美しさが秀逸だったが、今回は星野+櫻井による“Voo Doo”しかり、下界に生きる人間として限られた生を愉しみ、貪り尽くせ、とプリミティブな肉体性へと誘う。

骸骨が正面から凝視するジャケットのアルバム『memento mori』を昨年2月にリリースし、「死」と正面から向き合ったBUCK-TICK。その後、このミュージックシーンも思いがけない死や喪失感と向き合うこととなった。しかし、いやだからこそ、彼らはさらに自由にアグレッシブに、愛を込めてこんな歌を放ち続ける。《勝手にやっちゃえ》《死ぬほど楽しめ 踊れ》と煽りつつ、《俺が笑って観ててやる》という世界観は実は“スピード”の頃から変わらぬが、他者を見守る今井の視点はかつてなく慈愛に満ちている。死という厳粛さを前に、彼らは自らの役割にとても誠実に向き合っている。(井上貴子)
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