7インチの美学

アッシュ『A-Z ヴォリューム1』
2010年04月07日発売
ALBUM
アッシュ A-Z ヴォリューム1
デジタルによる配信と7インチで2週間ごとに1曲シングルをリリースして、それを1年間続けることで26曲ものシングルを発表するアッシュ。このアルバムはその前半。シングルとしてリリースされた13曲に加え、このプロジェクトの0曲目として無料配信された“リターン・オブ・ホワイト・ラビット”や、6曲のボーナストラックを加えることで、全20曲の「アルバム」としてリリースされる。1枚1枚のシングルは全部で26枚ということもあって、タイトル通りアルファベットに喩えられていて、N以降の後半戦はこの4月からリリースが始まる。

アッシュにとって、このシングルを切り続けるという戦略は、言うまでもなくソングライティングに回帰するという宣言である。以前はいい曲があってもアルバムのカラーに合わないから外さなきゃいけなかったとティムは語っていたが、もっと言えばアルバムとしての重厚さを求めるあまり、アッシュ本来の魅力が失われている傾向がここ最近は続いていた。そこから脱却するためにレコード会社との契約も結ばずに、このプロジェクトに乗り出したわけだが、結論から言えば大成功である。そういう意図をもってやっているから当たり前だが、とにかく曲がいい。デビュー時を彷彿とさせるような軽快さに満ち溢れている。2010年のシーンと密接にリンクするような作品ではないが、アッシュが帰ってきたと思うファンは多いはずだ。そして、彼らの音楽が日本のロックの進化に大きな影響を与えたことも分かるはず。やっぱいいバンド。(古川琢也)
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