昨年のスプリングルーヴでのパフォーマンスも記憶にまだ新しいUK発若手R&Bの旗手、クレイグ・デイヴィッド。今回、ユニバーサルへ移籍が決まり、せっかく名門モータウンを抱えるレーベルに移ったということでモータウンを中心にした過去のR&Bの名曲の数々を試みたというのがこの企画。ここまでならよくありがちな企画なのだが、実はクレイグのボーカルや唱法にとって実はこうした古典的な楽曲や作品がおそろしく魅力を引き出すものになっているというのがこの作品の新発見となっていてびっくり。“ドック・オブ・ベイ”などはちょっと軽めだが、むしろレニー・クラヴィッツ的な新感覚的なエッジが感じられて新鮮だし、スティーヴィー・ワンダーの“フォー・ワンス・イン・マイ・ライフ”などは超驚きのずっぱまり具合。こうしたオリジナルに忠実なカバーや“ジャスト・マイ・イマジネーション”などのコンテンポラリーなアレンジなど、めりはりのつき具合もお見事。個人的にはこれまではどこか物足りなさを感じていたところがあったけど、この作品では文句なしにこの人のボーカルの魅力に納得いった。(高見展)