2016年に見事な「復活」を果たしたクレイグ・デイヴィッド。2000年からスタートしたキャリアは、1stアルバム『ボーン・トゥ・ドゥ・イット』の世界的な成功で早くもそのピークを迎える。「キング・オブ・2ステップ」と称され、R&B、ネオ・ソウルを担う時代の寵児として一躍シーンのトップに躍り出た。
その後も2007年までに4枚のアルバムをリリースし、コンスタントに良作を生み出していくが、2010年、カバー&サンプリングで自身のルーツを振り返るアルバム『涙をとどけて』のリリース後は長い充電期間に入ってしまう。「ハングリー精神を無くしていた」と当人が振り返るように、あまりに早く訪れた成功は、彼にとって諸刃の剣でもあったのだろう。
しかし2016年、見事カムバック。ブレイク前夜のシガーラを起用した“エイント・ギヴィング・アップ”、クレイグのラップが冴えまくる“ワン・モア・タイム”と、鮮烈なヒットを連発。それらが収録されたアルバム『フォロイング・マイ・イントゥイション』は16年ぶりに全英1位を記録するなど、クレイグの時代が再来。
8年ぶりの来日を間近に控え日本独自企画盤としてリリースされる今作は、その『フォロイング〜』と最新アルバム『タイム・イズ・ナウ』からの楽曲を中心に、デビュー曲“フィル・ミー・イン”や2008年のベスト・アルバムに収録された“インソムニア”など、広く彼のキャリアを俯瞰する、まさに「今」聴くべきベスト盤といった趣。
UKガラージ、2ステップ、グライム、トロピカル・ハウスと、時代のツボを押さえたサウンドを意識しながら、洗練された普遍のソウルを響かせるクレイグ・デイヴィッド。ライブにダンスとシンガロングで応えるためにも聴き込んでおきたい楽曲ばかりだ。 (杉浦美恵)
詳細はSony Music Entertainment (Japan)の公式サイトよりご確認ください。
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