スタイルを凌駕する生命力

ケシャ『アニマル』
2010年05月12日発売
ALBUM
ケシャ アニマル
デジタル時代の申し子……とコピーをつけたくなるシンガーは今世紀に入ってからもうカウントし切れないくらい登場したわけだが、22歳にして「史上No.1デジタル・シングル・セールス」を記録したというこのケシャは、配信カルチャーの追い風に乗って颯爽と現れたスターなのだろう。その「記録樹立」シングルである“ティック・トック”を聴いてみるが……す、スミマセン。倍近く生きてるおばさんにはヒットの理由がわかりません。アグレッシブな女ヒョウのようなグッド・ルッキンと、プリンスの自宅に不法侵入したという破天荒なエピソード、パリス・ヒルトンらセレブとの交流も、彼女が「ON」な要因だろうか。

しかしこの人、ガガと同じぐらいの叩き上げで、17歳から楽曲提供を続け、本作でもほぼ全曲作曲を手がけている。音は当世風のテクノ・ポップなのだが、何かが過剰だ。「スタイル」なんてどうでもよくなるほど、若い女性特有のあり余った生命力を感じる。爆発寸前の、野心、パワー、欲望……ガガほど計算されていないだけに、それは過激にレアなのだ。タイトルの『アニマル』は、ストレートな自己肯定か。(小田島久恵)
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