ドラムスだけに太鼓判

ザ・ドラムス『ザ・ドラムス』
2010年06月09日発売
ALBUM
ザ・ドラムス ザ・ドラムス
このバンドの“レッツ・ゴー・サーフィン”のPVを初めて観たときのことをどう言えばいいだろう。ポカーンである。完全に思考停止。にわかに2010年のバンドとは信じられず、ググってググって、存在を確かめ、それでも信じられず、本気なのだろうかと再び確認する。ペッラペラのサウンド、どこで買ってきたのか確かめたくなるジョナサンの着ていた半袖の黄色いトレーナー、そして「ママ、僕、サーフィンに行きたい」という歌詞。それはまったく新しい風景だったのだ。どこかで見たことがあるような、でも、どこにもない、胸の中だけにずっと存在してきたような景色。このバンドにとってもそれこそが重要だったんじゃないだろうか。音楽はもちろんだけれど、ロックはもう一度新しい風景を見ることができる。ただ、それだけを言いたくて、ギコちないギターを弾いているのではないか。

その意味で、ザ・ドラムスというバンドは世代闘争なのだと思う。ビートルズも、ストーンズも、ツェッペリンも、ボウイも、ニルヴァーナも、レディオヘッドも知ってしまった僕たちがロックに夢想する勝手な期待を鳴らすべく、この頭でっかちの4人の若者はギターを手にしたのだ。おそらく彼らのサウンドのネタ元について、いろんな人がいろんなことを言うだろうけど、そういうのはあんまり気にしなくてもいいんじゃないか。新しいのに誰もが一度は聴いたことがあるような必要最小限のロックが鳴っている。今月の来日も上手くないだろうが、新しいものを見せてくれる気がする。(古川琢也)
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