異才から「異」が取ってみたら

アリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティ『ビフォー・トゥディ』
アリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティ ビフォー・トゥディ
アリエル・ピンクことアリエル・ローゼンバーグは、チープな機材で制作した宅録作品を中心にした活動を経て、アニマル・コレクティヴに認められ、Paw Tracksと連携した御仁。旧作再発を含む諸リリースを契機に、天然にワープ&ローファイに擦り切れた音世界のあえかな美~そして型に捕らわれないパフォーマンス(筆者が観た時は女装とテープ・マシンが主役でした)の評判が広まり、アングラ界のカルト・アイドルとして好き者に支持されてきた。しかし4AD移籍第1弾になる本作は、バンドとのれっきとしたスタジオ録音。彼の曲にしてはオーソドックスなポップもあるし、以前からよく使っていたディスコ~AOR風サウンドが前面に出ていて、シングルM5のように、ベタな80年代味で今時のキッズに受けそうな曲も。とはいえ壊れそうに美しいメロディは損なわれていなくてほっとしたし、プログレ(イエスか?)ばりに構築されたアレンジを聴かせるトラックも新鮮。プチ・トレンドとして「ローファイ」が再浮上している現在だけに、この逆行は有りだろう――もちろん、本人はそんな点は一切意識していないだろうけどね。(坂本麻里子)
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