途轍もないワンダー・ボーイ

スフィアン・スティーヴンス『ジ・エイジ・オブ・アッズ』
2010年10月13日発売
ALBUM
スフィアン・スティーヴンス ジ・エイジ・オブ・アッズ
8月にデジタル・リリースされた『All Delighted People EP』に続く、スフィアン待望のアルバム。久々の歌物作品としても話題のこれら連続リリース、先行EPがアルバムの指針になるか?とのこちらの予測をかわし、まったく異なる2作になっているのは驚きだ。フォーク~ロック的編成を基調とする前者も、彼らしい詩情に満ちたメロディとジミヘンばりのギター・ソロの絡みなど、聴きどころ満載。しかし、打ち込み、ループ、オート・チューン、シンセ他を駆使したエレクトロR&Bサウンド――それ自体は彼の初期作品を思い起こせばさほど意外ではないし、近年のアニマル・コレクティヴやディスカヴァリーらブルックリン組のモードとも通じる――にオーケストラと清楚なクワイアという異なる質感を縫いこんだ本作は、スキゾで、しかしクレイジーに美しいサウンド・スケープを展開していく。その柔軟な振れ幅と霊感は、天才アーサー・ラッセルを思い起こさせるものだ。エピックな長尺曲(EPには最大17分台、また本作ラスト曲は25分以上)の存在、示唆に富んだタイトルも含め、コンセプチュアルなステイトメント大作の誕生か?と興奮を隠せない。(坂本麻里子)
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