クレイジー・ホースとのロック・アルバムではない。かと言って、フォークなソロ・アルバムでもない。ソロはソロだが特殊なアルバムである。となると、ニール・ヤングがたまにやらかす素っ頓狂な問題作か? と心配にもなるが、いやいやそうではない。もったいぶって申し訳ないが、この作品はニール・ヤングのディスコグラフィーの中では特殊なものではあるが、実にすばらしい成功作である。
この作品は、U2の『ヨシュア・トゥリー』などのプロデュース、イーノとの共作や、ソロ・アルバム『ベラドンナ』(名盤)で知られるダニエル・ラノワとの共作アルバムで、ニール・ヤングのギター1本の弾き語りを、ラノワがセッティングしたレコーディング機材でほぼ一発録りして、それをラノワが後から音響処理を施している。つまり、ニール・ヤングのギターの音をダニエル・ラノワが白昼夢のようなサイケデリックな音に処理しているのである。ニール・ヤングのシンプルでストレートなフォーク・ミュージックの力と、ラノワのルーツ・ミュージックとアンビエントに関する深い造詣が出会った、奇跡のような作品なのだ。
そして、それはまさに「今」鳴るべき音だ。リヴァーブとレイヤーで包まれた音楽の神秘性、それは今のアメリカの先鋭的なインディー・バンドが追い求めているものと一致している。
70年代のフォーク/ロックの時代、90年代のグランジの時代、そして今のサイケデリック・ノスタルジアの時代。またもニール・ヤングは時代とシンクロする。アーティストとしてブレないからだ。(山崎洋一郎)