約1年ぶりのニューシングル。“LOTUS”は京のボーカルとヘヴィな重低音が太い螺旋となって絡み合い波打ち、重なるギターの音色がドラマティックに色彩を添える音像はまさに圧巻。前作“激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇”と比べるとメロディが掴みやすく、ハイトーン・ボイスで歌われる旋律が、哀切とも焦燥ともつかない感情の繊細な陰影を浮き彫りにしていく。音の激しさとは対照的に、目の前には暗く、揺るぎない常闇が広がるようだ。ラストパートではカタルシスを感じさせる音色が響くが、曲はわざとらしい余韻を残さずにそっと幕を閉じる。まるで闇の果てに壮大な光を用意するような、単純で生易しい展開を拒否するかのように。なぜか。それはDIR EN GREYが描こうとする世界が圧倒的にリアルだからだ。「物語」なら希望に満ちたハッピーエンドで充分だが、私達の「人生」は闇の後に光がきてハイおしまい、とはいかない。闇や孤独や悲しみが決して消え去らないことを受けいれ、それでも突き進む様な強靭な音楽。「希望」や「絶望」に甘んじない、不思議な高潔さを湛えている。(福島夏子)