歴史あればこその「原点回帰」

ストレイテナー『STRAIGHTENER』
ストレイテナー STRAIGHTENER
誠実な音楽を聴いた。もちろん過去の作品でも常にストレイテナーは音楽に対して誠実であったし、これからも変わることはないだろう。だが敢えてそれを言葉にしたくなるほど、これはピュアな作品だ。誰もが思う、敢えてバンド名を冠した作品の重さと意味が直球で伝わる。
 
その重さをはぐらかすように、“You and I”のPVでは、更生したボビー・ギレスピーみたいに黒眼鏡と革ジャンで歌ってるホリエアツシだが、黒眼鏡の奥では真っ直ぐ未来を見ているはずだ。“氷の国の白夜”で描くフリーズした世界を彼は抜け出し、自分が音楽でできること、やりたいこと、すべきことを、研ぎすまして本作にぶち込んだのだと思う。「原点回帰」というのは、そういうことだろう。
 
絶望が抑圧する喜怒哀楽を叩き起こすように、どの曲も怒りや悲しみや喜びをリアルに呼び起こすドラマがある。十分練り上げた歌詞を歌うホリエのボーカル力は恐ろしく強く、しなやかなメロディとタイトなビートの対比が作る立体的な音像で曲のシェイプを見せる。初めて観た時はふたりだったと思い出したのは、歴史あればこその「原点回帰効果」だろう。(今井智子)
万人のためのストレイテナー
 
素晴らしい! みんなが聴きたかったストレイテナーがここにいる。自らの名を冠した7thアルバム『STRAIGHTENER』。初期のエモい熱量と進化したバンドアンサンブルが合体した最強の一枚だ。前作の風通しのよさがさらに全開になり、彼らのライブで感じる特有の感覚――テナーは今ここにいるみんなのためのバンドだという信頼と幸福感が音源としてがっつり鳴っている。ファンタジックなロック寓話“KINGMAKER”も、“SILLY PARADE”の激熱ダイナミズムも、“CRY”のアンダーグラウンドなポップ感も、美しい歌メロも攻撃性も全部ある。そもそもテナーというバンドは、みんなが求める音楽に応えるタイプでは決してない。むしろその先にある何かを手探りで描き続けてきた。《悲しみに埋もれた世界に別れを告げるんだ》(“羊の群れは丘を登る”)と呼びかけながらも、《僕らは行かなきゃ》と先を急ぐ。それは“ROCKSTEADY”の頃から微塵も変わらない。だからこそ音が鳴っている瞬間の覚醒感はハンパなく、切ないエモーションが生まれる。今作はそんな冒険の一つの集大成。2010年代ロックの原点と未来が眩しくスパークする名盤だ。(井上貴子)
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